冷凍睡眠(コールドスリープ)とは?映画や漫画の世界が現実に?

死ぬことをよく「永遠の眠りにつく」などと表現するが、その眠りから再び醒めることができたとしたらどうだろう。自分の寿命では見られそうにない未来を見たいと願う人々が、試行錯誤の末にたどりついたのが「コールドスリープ」「クライオニクス」である。冷凍睡眠とはなんなのか?SFや映画の中の創作ではなく、実際にあった冷凍睡眠の話を紹介しよう。

冷凍睡眠とは?

CBS Television [Public domain], via Wikimedia Commons

冷凍睡眠とは、別名「コールドスリープ」や「クライオニクス」や「人体冷凍保存」ともいわれ、人体を冷凍状態に保ち、老化を防ぐことで、現在の肉体の状態を保ち、人間の寿命をはるかに超える未来まで生きながらえることを表現する言葉として用いられる。数々の映画や漫画で未来の技術として紹介されており、近い将来実現される技術の一つとして期待されている。

 

冷凍睡眠の歴史

1960年に「冷凍保存された人間の精子を使って、女性が妊娠した」という論文をレイモンド・ブンジが発表したのがきっかけにとなり、1962年にロバート・エッティンガーが人体冷凍保存についての論文を発表した。

それから5年後、ジェームズ・ベッドフォード博士という人物が初めて冷凍保存を施された。
ジェームズ博士が冷凍保存されてから、クライオニクスの技術は進歩を遂げ、現在に至るまでに冷凍保存されている人数は350人程(2016年統計)だという。

 

冷凍睡眠の方法について

人はどのように冷凍保存されるのだろうか。ただ冷凍庫のようなところに入れるだけでは細胞の破壊が生じるため、ミイラを作るように複雑な工程がある。まずは全身の血液をすべて抜いて「クライオプロテクター」という液体に変える作業が行われる。冷凍睡眠の希望者は死期が近づくと団体に連絡し、死後すぐにこの作業が行われるよう準備が整えられるのだそうだ。液体窒素で-194℃まで冷やされた遺体はアルミに包まれてポッドで保存されるという。SF的な光景だが、まさか実際にこの技術が使われる日が来るとは、昔の人にはとても想像できなかっただろう。それを考えると、百年後や千年後には解凍の技術も編み出されている可能性もゼロではない。

生者か死者かで異なる表現

ところで、「コールドスリープ」と「クライオニクス」という言い方があるが、何が違うのだろうか。コールドスリープは、生きたままの人間を冷凍状態で眠らせる方法であり、クライオニクスは死者を冷凍保存して未来に残す方法である。未知の惑星を探索する際など、何万光年も離れた場所へ行くまでに寿命が尽きてしまう可能性があるが、前者の技術が確立されれば移動中も食物や水の心配をすることなく目的地にたどりつける。また、地球上で行われればはるか未来の世界や技術を見ることができるかもしれない。
後者は、現代の医学では治療できない人を遺体で保存して、未来に復活させてもらうことを願う技術だが、一度死んだ者を生き返らせることができるのか、未来の人が手を貸してくれるのかがリスクとなる。

冷凍睡眠を受け付けている団体が実在する!?

レッドソックス所属のテッド・ウィリアムズ氏

Baseball Digest, back cover, May 1949 issue. [1] [Public domain], via Wikimedia Commons

病気や家族の希望などにより、死後冷凍保存状態で未来を待っている人々は実在する。著名人だとボストン・レッドソックス所属のテッド・ウィリアムズ氏などだ。彼は息子の依頼により冷凍保存されている。息子のジョンも死後冷凍保存されていて、二人が将来冷凍睡眠状態から目覚めて再び会話する日が、もしかしたら来るかもしれない。

 

ビットコインを開発したハル・フィーニー氏

また、仮想通貨のビットコインを開発したハル・フィーニー氏も冷凍保存されている。難病のALSを抱えていた彼は、2009年に自身がALSであるとブログで告白。その5年後、死亡したハルは冷凍保存された。

高度な知識や才能を持った人が未来の世界で目覚めたら、どのようなことが起こるか、想像してみるのも楽しいかもしれない。

 

最年少の冷凍睡眠少女マセリン

タイ国籍のマセリンは、冷凍保存されている人々の中で恐らく最年少だと噂されている少女である。
彼女は上皮腫という難病を抱えており、52回に及ぶ手術や化学療法を行ったが、僅か2年という短い生涯を終えた。
両親の希望により、身体と脳が冷凍保存されている。

マセリンには兄弟が2人おり、その兄弟達が体外受精で授かった子である為、両親は先進技術に対して理解がある人物であった。

 

冷凍睡眠されている日本人「ミチコ」

冷凍睡眠施設の記録には「ミチコ」という日本人と思われる人物の名もあり、日本でも関心を持っている人がいることが一時話題になっていた。

この先さらに研究が進んで、一般人でも手が届きやすいものになれば、検討する人はさらに増えるかもしれない。冷凍睡眠は死後も団体に費用を払う必要があるが、生命保険などで対応できるともいわれている。海外では家族の反対で訴訟が起きるケースも多く、周囲の人の理解も重要になってくる。臓器提供や検体と同じく、本人の意思と遺族の考え方の違いで軋轢を生むことも少なくないようだ。

 

冷凍睡眠を行っている団体

冷凍睡眠を行っている団体は日本にはないが、海外には存在する。アメリカのアルコー延命財団では多くの人やペットの遺体が保存されているそうだ。また、アメリカのクライオニクス研究所でも受け入れてくれるとのこと。費用は全身の場合200万以上必要となるので、依頼を考える際はサイトをよく見て検討しよう。少なくとも現代の技術では、死後冷凍保存された人間を再生することはできないので、あらゆる面からの懐疑的な意見も多いそうだ。

 

冷凍睡眠技術の現状

冷凍保存されたマウスからクローンを作成することはすでに実現している。が、クローンはあくまで複製であり、もとの個体とはべつの生命である。また、精子や卵子といった部分的な冷凍保存は現在も可能だが、全身をまるまる冷凍保存して目覚めさせる技術はまだ研究段階である。人体を死後冷凍保存する技術はできているものの、解凍して復活させる技術はこれからの未来の人に託されているということだ。

日本では冷凍睡眠を行っている施設はないが、国土の狭さや災害のことを考えるといたしかたないともいえる。冷凍睡眠施設は広大な土地も必要になるが、何より、地震などの天変地異が起こりにくい場所に作られることが望ましいだろう。

まとめ

SFの世界などの空想でしかなかったコールドスリープやクライオニクス。もし実現されるとしたら、今の世界を未来に生々しく伝えることもできるだろう。今よりさらに進んだ未来の技術を、寿命に関わりなく見たり体験したりもできるかもしれない。未来が自分に関わりないことでなくなれば、よりよくしたいと願う人も増え、結果的によいほうへ向かっていく可能性も高い。そういった意味でも、冷凍睡眠は夢のある話なのかもしれない。

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